遠国日記

都から遠く離れた遠国(九州あたり)から、日々の思い、読書日記などを発信します。

今村夏子『星の子』感想

 

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

 

 

  12月31日読了。2020年、芦田愛菜主演映画として公開されたので気になり図書館で単行本を借りて読んでみました。宗教にはまる家庭の娘として育つ主人公のお話というのは映画の予告などでなんとなくは分かっていましたが、読んでみると主人公の一人称で進む、異質なはずなのにその異質さを感じさせない静かな物語でした。

 ラストシーンは親子の絆が描かれるとともに別れを予感させるような気もしました。友人に見えるモノが自分には見えない、自分に見えるモノが両親に見えない。同じモノを見ていても、だんだんと見える景色が変わっていくということは主人公の気持ちや感覚が周囲と変わっていくことを示しているように感じました。きっと映像で見るとすぐに理解できるんだろうけど、もっと想像力を働かせないといけないな、と思いました。

 

 新興宗教の家庭の同級生は、小学生・中学生の時は2・3人いて、何か事情がある、自分たちと違うのかなというような気持ちで見ていました。親が信仰している宗教の2代目世代はどんな気持ちなのか。全肯定できなくてもきっと全否定もできないような、信じることが難しくてもまったく信じないことも難しいような。あまり当事者の気持ちを考えたことがなかったなと思いました。

 

作者の今村夏子さんの本は初めて読んだけど、大人も子どもも読みやすい文体だと感じました。機会があれば別の作品も読んでみたいです。